4 -3 社会との交流
一般市民の⽅々に科学の面白さ・意義を伝えるとともに,科学コミュニティの健全な発展を促すような相互交流を 醸成するための取り組みは,ますます重要性を増している。分子科学研究所では,このようなアウトリーチ活動の一 環として,他機関との連携・共同により国内の広い範囲をカバーする事業,および,岡崎の地域性を重視した事業と いう2つのタイプを実施している。前者としては,自然科学研究機構シンポジウムならびに大学共同利用機関シンポ ジウムがあり,後者は分子科学フォーラム・岡崎市民大学講座等である。
4 -3 -1 自然科学研究機構シンポジウム
当シンポジウムは2006年より年2回のペースで実施され,下記のようにこれまでに計14回開催されている。 第1回:「見えてきた! 宇宙の謎。生命の謎。脳の謎。科学者が語る科学最前線」,サンケイプラザ(東京都千代
田区),2006年3月21日。
第2回:「爆発する光科学の世界—量子から生命体まで—」,東京国際フォーラム(東京都千代田区),2006年9月 24日。
第3回:「宇宙の核融合・地上の核融合」,東京国際フォーラム,2007年3月21日。
第4回:「生命の生存戦略 われわれ地球生命ファミリーは いかにして ここに かくあるのか」,東京国際フォーラム, 2007年9月23日。
第5回:「解き明かされる脳の不思議」,東京国際フォーラム,2008年3月20日。 第6回:「宇宙究極の謎」,東京国際フォーラム,2008年9月23日。
第7回:「科学的発見とは何か 「泥沼」から突然「見晴らし台へ」」,東京国際フォーラム,2009年3月20日。 第8回:「脳が諸学を生み,諸学が脳を統合する」,学術総合センター一橋記念講堂,2009年9月23日。 第9回:「ビックリ 4D で見るサイエンスの革新」,東京国際フォーラム,2010年3月21日。
第10回:「多彩な地球の生命—宇宙に仲間はいるのか—」,学術総合センター一橋記念講堂,2010年10月10日。 第11回:「宇宙と生命—宇宙に仲間はいるのかII—」,ナディアパーク,2011年6月12日。
第12回:「知的生命の可能性—宇宙に仲間はいるのかIII—」,東京国際フォーラム,2012年3月20日。
第13回:「日本のエネルギーは大丈夫か? 〜E = mc2は人類を滅ぼすのか,救うのか… … 〜」,吹上げホール, 2012年9月29日。
第14回:「分子が拓くグリーン未来」,学術総合センター一橋記念講堂,2013年3月20日。 第15回:「アストロバイオロジー」,学術総合センター一橋記念講堂,2013年10月14日。 第16回:「天体衝突と生命進化」,名古屋市科学館サイエンスホール,2014年3月8日。
第17回:「記憶の脳科学—私達はどのようにして覚え忘れていくのか—」,学術総合センター一橋記念講堂,2014 年9月23日。
第18回:「生き物たちの驚きの能力に迫る」,学術総合センター一橋記念講堂,2015年3月22日。
第19回:「宇宙から脳まで 自然科学研究の“ ビッグバン” —コンピューターが切り開く自然科学の未来—」, 名古屋大学豊田講堂,2015年9月15日。
第20回:「生命の起源と進化〜地球から系外水惑星へ〜」,学術総合センター一橋記念講堂,2016年3月13日。 本シンポジウムに対する分子科学研究所の関与は次の通りである。第1回において,「21世紀はイメージング・サ イエンスの時代」と銘打ったパネルディスカッション中で,岡本裕巳教授が「ナノの世界まで光で見えてしまう近接
場光学」というタイトルで講演を行った。第2回目は,講演会全体の企画を分子科学研究所が中心となって行った(詳 細は「分子研リポート2006」を参照)。第7回では,加藤晃一教授が自らの体験に基づいて「研究の醍醐味とは何か」 を伝える講演を行った。第11回では,大峯巖所長が「水の揺らめきの世界;揺らぎと反応と生命」というタイトル で講演を行った。第14回は,再び講演会全体の企画を分子科学研究所が中心となって行った(詳細は「分子研レター ズ68号」を参照)。
また,講演会の開催と併せて,展示コーナーを設けてビデオやパネルを用いた説明を行なってきている。常設展示 室に設置されている可搬式のグラフィックパネルや模型を適宜利用するなど,展示内容のさらなる充実に努めている。 合わせて,十分な説明要員を確保するために研究者の積極的な参加も促している。
4 -3 -2 大学共同利用機関シンポジウム
本シンポジウムは,自然科学研究機構を含む4つの大学共同利用機関を構成する19の研究機関と宇宙科学研究所 が,総合研究大学院大学と合同で開催したものである。各研究機関が「知の拠点群」として果たしている役割と,研 究の推進を通じて切り拓かれた科学の広大なフロンティアの現状について,広く一般市民の⽅に紹介することを目指 している。2010年11月20日にベルサール秋葉原にて「万物は流転する」とのテーマのもとに第1回が開催され, 2011年11月26日には同会場にて第2回「万物は流転するII」,2012年11月17日には東京国際フォーラムにて 第3回「万物は流転する〜誕生の謎」,2013年11月16日には第4回「万物は流転する〜因果と時間」,2014年 11月22日には同会場にて第5回「研究者に会いに行こう!—日本の学術研究を支える大学共同利用機関の研究者博 覧会」,2015年11月29日にはアキバ・スクエアにて第6回「研究者に会いに行こう!—大学共同利用機関博覧会—」 が開催された。分子科学研究所はブース展示に参加し,先端的研究成果や分子科学に関連する基本事項の解説を行っ ている。例えば,常設展示室に設置されている920MHz NMR の半立体模型(第2回),大型スクリーンに投影したスー パーコンピューターによるシミュレーションCG(第3回,第4回,第5回,第6回),および各種の大型分子模型(第 4回,第5回,第6回),研究者トーク(第6回)等を通じて研究活動に関する詳しい説明を行った。
4 -3 -3 分子科学フォーラム
当フォーラムは「分子科学の内容を他の分野の⽅々や一般市民にも知らせ,また,幅広い科学の話を分子研の研究 者が聞き自身の研究の展開に資するように」との趣旨のもとに,1996年より実施されている。豊田理化学研究所と 共催となっており,年度毎に年間計画を豊田理化学研究所の理事会に提出している。2008年度よりは,一般市民の
⽅々に科学の面白さ・楽しさを伝える「市民一般公開講座」として新たに位置づけられ,2009年度には,一元的で 効率的な活動の展開を目指して,広報室を中心とした実施体制の整備を進めた。この際,講演回数をこれまでの年6 回から4回に変更し,密度の高い講座を開講することで,より魅力的な『分子科学フォーラム』の実現を図った。以来, 幅広い分野で先導的な立場におられる研究者や技術者を講師としてお招きし,多様なテーマで講演を実施している。 2013年度は,第1回目にサイエンス・ジャーナリストのお二人による座談会形式で実施するなど,新たな試みを行っ た。どの回も,100 名を超える多数の参加者があり,特に,通算第 100 回記念となった2014年1月31日は,追加の 椅子を多数準備する必要があったほどの盛会であった。2013年度より,隣接する岡崎高校のスーパーサイエンス事 業のご協力を頂き,多数の高校生の皆さんにも参加して頂いている。さらに,小学生以下の小さなお子さんの参加も 見うけられるようになった。若い参加層の皆さんから活発な質問をお寄せ頂き,講演を盛り上げて頂いている。地域 に根差した公開講座会として,広く認知されてきたものと評価される。
本年度の実施状況は以下の通り。
回 開催日 テーマ 講演者
105 2015. 5.14 野菜がおいしくビタミンも増加
—LED が拓く近未来の植物工場
吉田 淳一
(千歳科学技術大学特任教授)
106 2015.10.17 宇宙の光で見えない分子を探る
繁政 英治
(分子科学研究所准教授)
107 2015.10.17 「はやぶさ」1号2号が拓く宇宙探査
國中 均
(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙探査イノベーションハブハブ長)
108 2016. 2. 5 生物活性分子の新しい世界
上杉 志成 (京都大学教授)
4 -3 -4 分子研コロキウム
分子研コロキウムは既に800回を越える歴史のあるセミナーであり,元々のコロキウムの趣旨は,全ての教授,准 教授(当時は助教授)が参加し,各人の専門分野を越えて学問的な刺激を受ける場を提供することであった。しかし, 数年少し前程度からその趣旨が薄れてきており,自分の研究内容に関係するセミナーのみ聴講し,専門外の講演には 関知しないとの風潮が少なからず広まってしまった。このような聴講スタイルであれば通常の研究セミナーや学会発 表でその目的は達成可能である。コロキウムの立ち上げ当時とは,スタッフの数も研究分野の広がりも大きく異なる ことは事実であるが,やはり当初の趣旨に立ち返りコロキウムの存在意義を再度高めるべく,2010年度から分子研 コロキウムの改革に着手した。分子研に関連する研究分野の最先端で自ら先陣を切って研究をされている⽅々を講師 としてお招きし,多くの教授・准教授が参加できるように,毎月第3金曜日に開催される教授会議終了後にコロキウ ムを行うことを原則とした。講演者の先生には通常の研究発表よりも研究の背景や今後の展開等の大局的な内容を多 めに話して頂き,講演者・参加者の皆で深く自由に議論できるある種のブレーンストーミングの様な場を提供できる ことを目指している。コロキウム終了後には飲み物を片手にリラックスした雰囲気で更に議論を掘り下げるような懇 談会も毎回開催している。
以下は2015年度に行われた分子研コロキウムの一覧である。
回 開催日 テーマ 講演者
868 2015. 4. 1
Biosensing with a Twist: Detection and Characterization of Biomaterials with Sculpted EM Fields
Prof. Malcolm Kadodwala (Glasgow University)
869 2015. 4. 8
Combining Ultrafast Optical and Core-Level Spectroscopies for the Study of Chemical Dynamics
Prof. Majed Chergui
(Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne)
870 2015. 5.25
Mapping Atomic Motions with Ultrabright Electrons: The Chemists’ Gedanken Experiment Enters the Lab Frame
Prof. R. J. Dwayne Miller
(Max Planck Institute for the Structure and Dynamics of Matter/University of Toronto)
871 2015. 6.19
機能性分子を自在に操る時代を目指して: 局在電子系の物理
Toward Holding the Molecular Functionality: Physics on Localized Electron System
解良 聡
(分子科学研究所教授)
872 2015. 9.18
マ イ ク ロ 流 体 デ バ イ ス 技 術 の 創 薬・ 医 療 応用
Microfluidic Devices for Pharmaceutical/ Medical Applications
竹内 昌治
(東京大学生産技術研究所教授)
873 2015.10. 5 The Science of Peer-Review Dr. Iulia Georgescu
(Senior Editor, Nature Physics) 874 2015.10. 8 Photosynthetic Light Harvesting from
Individual Complexes to the Grana Membrane
Prof. Graham R. Fleming
(University of California, Berkeley) 875 2015.10.16 スピン流の物理と応用Physics and Application of Spin Current
齊藤 英治
(東北大学金属材料研究所教授) 876* 2015.11. 6 The Mystery of Water; X-Rays Provide
Unique Insights
Prof. Anders Nilsson (Stockholm University) 877 2015.11.17 Optical Control of Atomic Interactions at
Nano-Kelvin Temperatures
Prof. Cheng Chin
(University of Chicago) 878 2015.11.18 Quantum Localization in Laser-Driven
Molecular Rotation
Prof. Ilya Sh. Averbukh
(Weizmann Institute of Science)
879 2015.11.20
Path from Microscopics to Phenomenological Theories: Examples from Physical Chemistry and Condensed Matter Physics
Prof. Biman Bagchi
(Indian Institute of Science)
880 2015.11.20 Computer Simulation Study of Carbon-Based Supercapacitors with an Ionic Liquid Electrolyte
Prof. Hyung Kim
(Carnegie Mellon University)
881 2016. 1.15 迅 速 合 成 触 媒 が 拓 く 生 命 機 能 分 子・ ナ ノ 炭素分子のサイエンス
伊丹健一郎
( 名 古 屋 大 学 ト ラ ン ス フ ォ ー マ テ ィ ブ 生 命 分子研究所教授)
882 2016. 1.28 Molecular Quantum Gas—a New Frontier for Quantum Physics and Chemistry
Prof. Jun Ye
(University of Colorado/NIST) 883 2016. 2.19 Technology and Applications of High-Power
Femtosecond Longwave Lasers
Prof. Andrius Baltuška
(Vienna University of Technology) 884 2016. 3. 1 Implementation of the Quantum Ising Model
in Large Arrays of Individual Rydberg Atoms
Dr. Antoine Browaeys (Institut d’Optique, CNRS)
885 2016. 3. 1 Hot Rydberg Atoms Prof. Robert Löw
(University of Stuttgart)
886 2016. 3. 3
The Chirality Induced Spin Selectivity (CISS) Effect—From Spintronics to Electron Transfer in Biology
Prof. Ron Naaman
(Weizmann Institute of Science)
887 2016. 3.30
Electronic Excited State Relaxation in Complex Systems: Two Stories of Harmony between Theory and Experiment
Prof. Peter Rossky (Rice University)
*森野レクチャーならびにUVSOR シンポジウムとの共同開催
4 -3 -5 岡崎市民大学講座
岡崎市教育委員会が,生涯学習の一環として岡崎市民(定員1,500 人)を対象として開講するもので,岡崎3機関 の研究所が持ち回りで講師を担当している。
分子科学研究所が担当して行ったものは以下のとおりである。
開催年度 講 師 テーマ
1975 年度 赤松 秀雄 化学と文明
1976 年度 井口 洋夫 分子の科学
1980 年度 廣田 榮治 分子・その形とふるまい
1981 年度 諸熊 奎治 くらしの中のコンピュータ
1982 年度 長倉 三郎 分子の世界
1983 年度 岩村 秀 物の性質は何できまるか
1987 年度 齋藤 一夫 生活を変える新材料
1988 年度 井口 洋夫 分子の世界
1991 年度 吉原經太郎 光とくらし
1994 年度 伊藤 光男 分子の動き
1997 年度 齋藤 修二 分子で宇宙を見る
2000 年度 茅 幸二 原子・分子から生命体までの科学
2003 年度 北川 禎三 からだで活躍する金属イオン
2006 年度 中村 宏樹 分子の科学,独創性,そして東洋哲学
2009 年度 平田 文男 生命活動における『水』の働き
2013 年度 大峯 巖 水,水,水
4 -3 -6 その他
(1 ) 岡崎商工会議所(岡崎ものづくり推進協議会)との連携
岡崎商工会議所は,産学官連携活動を通じて地元製造業の活性化と競争力向上を目的に「岡崎ものづくり推進協議 会」を設立し,多くの事業を行っている。この協議会と自然科学研究機構岡崎3研究所との連携事業の一環で,協議 会の会員である市内の中小企業との交流会を平成19年度に開催し,この交流会によって出来あがった協力体制は現 在も継続している。また岡崎商工会議所主催で隔年開催される「岡崎ものづくりフェア」へ大学・研究機関として展 示ブースを設けて参加している。これらは主に技術課の機器開発班と電子機器開発班が中心となり,地域の民間企業 からの施設利用やナノプラットフォーム事業の利用促進の広報として貢献している。
(2 ) コミュニティサテライトオフィス講演会
岡崎大学懇話会(市内4大学で構成)・岡崎商工会議所が運営するコミュニティサテライトオフィスにおいて,地 域社会や地域産業の活性化に還元する主旨で一般市民及び企業関係者を対象として実施している。
開催日 テーマ 講 師
2009. 1.15 分 子 を 活 用 す る 近 未 来 技 術 〜 分 子 科 学 研 究 所 が 関 与 す る エ ネ ル ギー問題や環境問題等への取組み〜
西 信之 教 授
2010. 1.19 次世代の太陽電池について 平本 昌宏 教 授